「何かにぶつけた覚えもないのに窓ガラスにヒビが入っていた」という場合、ガラスが「熱割れ」を起こした可能性があります。
熱割れは、熱が原因で自然に窓ガラスにヒビが入ってしまう症状のことです。
原因を正しく理解し、予防策を講じておくことで、熱割れを未然に防ぐことが可能となります。
この記事では、窓ガラスが熱割れするメカニズムと見分け方をはじめ、熱割れの要因や対策する方法などについて詳しく解説しますので、参考にしてください。

目次
窓ガラスが熱割れするメカニズムと見分け方
なぜ窓ガラスが熱割れを起こすのか、そのメカニズムと、熱割れと衝撃によるガラス割れを見分けるポイントについて解説します。
窓ガラスの熱割れが起きるメカニズム
物をぶつけたわけでもないのに突然窓ガラスにヒビが入る熱割れは、ガラス表面の温度差が原因です。
熱で膨張したガラスは周囲から引っ張られている状態になり、このとき発生する力のことを「熱応力」と呼びます。
ガラスの強度を超える熱応力が発生するとガラスが極端に引っ張られ、ガラスが割れてしまうのです。
熱割れかどうかを見分けるポイント
熱割れかどうかを見分けるポイントは、ヒビの入り方にあります。
基本的に、熱割れのヒビは窓ガラスの端から端へと垂直の状態で、1~2本のヒビが入っているのが特徴です。
一方、物をぶつけるなど物理的な力で割れた場合、ぶつかった点から放射状にヒビがたくさん入るという特徴があります。
こうした違いを理解しておくことで、熱割れかどうかを判断しやすくなるでしょう。
ガラスの割れ方の違いとは?熱割れ、衝撃による割れ、自然破損の特徴
ガラスが割れたとき、「何が原因なのか?」を正しく判断することは、適切な修理対応のために非常に重要です。
一見同じように見えるガラスの割れも、熱割れなのか、衝撃によるものなのか、自然破損なのかによって、その後の対策が異なります。
特に熱割れは、網入りガラス(ワイヤーガラス)や表面にフィルムを貼っているガラスに起こりやすいため、熱割れを防ぎたい場合には、交換するガラスの種類を熱割れしにくいものにする必要があります。
ここでは、熱割れとその他のガラス割れとの違いを分かりやすく整理し、見分け方のポイントをご紹介します。
熱割れと衝撃による割れの違い
熱割れは、ガラスの表面に大きな温度差が生じた際に、膨張率の違いによって内部応力が発生し、その力に耐えきれずにガラスが割れる現象です。
割れ方の特徴は、ガラスの端(小口)から始まり、まっすぐな線状にヒビが1、2本入るようなものになります。
対して、衝撃によるガラス割れは、外部から物理的な力が直接加わったことが原因で生じます。
この場合、モノがぶつかった箇所が割れの起点となり、そこから放射状に無数のヒビが広がるのが特徴です。
熱割れと自然破損の違い
自然破損とは、製造時のガラス内部に混入した異物や、微細なキズ、ガラス自体の歪みによって、突然割れる現象のことです。
ガラスが枠に強く固定されすぎていることで内側にストレスが蓄積して、ある日突然割れる「応力割れ」も自然破損に含まれます。
熱割れとの違いは、割れ方と起点の位置です。
応力割れは、ガラスの端のごく一部、特に四隅などに過度な力が集中していた場所を起点に割れ、ヒビの広がり方も一方向ではなく不規則な形になります。
割れるタイミングも異なります。
応力割れは、ガラスを設置して間もないタイミングでいきなり起こることが特徴です。
一方、熱割れは季節や天候、室内環境など外部要因によって時間差で発生することが多く、多くのケースがガラス設置から年月が経って発生します。
自然破損の場合、メーカーや設置した会社に問い合わせると交換してもらえるケースがあるため、上記のような特徴があれば問い合わせてみましょう。
窓ガラスが熱割れしやすい7つのケース

3,000度の高温でも燃えないガラスですが、ガラスコップに熱湯を注ぐと割れてしまうように、温度差には弱いのがガラスの性質です。
窓ガラスが熱割れしやすいケースはどのようなものがあるののか、ここでは7つのパターンを解説します。
網入りガラスを設置している
ガラスの内部に網が入っている「網入りガラス」は、防火性が高いため防火地域で使われることが多いガラスです。
この網入りガラスには、内部の金属製のワイヤーが熱を吸収しやすく、日光が当たると温度差が生じるため熱割れしやすい特徴があります。
特に、日光の当たる場所で網入りガラスを使用している場合は、熱割れが多い傾向があります。
複層ガラス(ペアガラス)を設置している
複層ガラス(ペアガラス)は、2枚のガラスを組み合わせ中間層を作ることで高い断熱性があり、近年の多くの新築住宅の窓ガラスに採用されています。
この複層ガラス(ペアガラス)は、外側のガラスが直射日光によって熱を吸収すると、内側のガラスと温度差が生じて熱割れを起こしてしまうことがあります。
厚いガラス(16mm~19mm)を設置している
割れにくく耐久性が高いため、厚みのある一枚ガラスを設置してある場合にも、熱割れのリスクが高いので注意が必要です。
ガラスに厚みがあると、ガラスの中心部分とサッシ部分とで温度差を生じやすいことが要因です。
特に、ガラスに16mm~19mmの厚みがある場合は、内側と外側の温度差が開きやすいため、複層ガラスと同じ原理で熱割れを起こしやすくなります。
窓ガラスが老朽化している
新品のガラスの熱割れは多くはありませんが、老朽化した窓ガラスは熱割れすることが多くなります。
ガラスそのものは劣化しにくく、半永久的に利用できますが、屋外に面している窓ガラスは外の熱や冷気、雨風の影響を直接受け、長年のダメージが蓄積しています。
概ね10~15年ほどで窓ガラスの耐久性が低くなるため、外側と内側で温度差から生じる熱応力に耐えかね、老朽化したガラスに熱割れが起こるというわけです。
冷暖房器具の影響
ストーブやファンヒーターなど、床置きの暖房器具も熱割れの原因になります。
冬場、窓ガラスの近くに暖房器具を置くことで外の冷気と室内の暖気に温度差を生じ、熱割れが起こりやすくなります。
夏には、エアコンの冷たい風が窓ガラスに直接当たる場合、外の暑さを吸収したガラス面との間に温度差が生じ、熱割れの原因になります。
窓ガラスにフィルムを貼っている
窓ガラス用の飛散防止フィルムや結露防止フィルムなど、さまざまなフィルムで簡単にガラスの性能を補助できます。
こうしたフィルムを窓ガラスに貼ると、ガラスの内部に日光の熱などがこもりやすくなるため、熱割れを起こす要因となります。
特に、先述した網入りガラスは、ただでさえ熱割れを起こしやすいため、熱割れ防止の観点からは網入りガラスにフィルムを貼ることはおすすめできません。
カーテン、家具などで熱がこもる
カーテンやブラインドを長期間締め切っていると熱割れの要因になります。
カーテンやブラインドを締め切った状態は、熱に逃げ場がなくなり、窓ガラスとの間に熱がこもり高温な状態が続いてしまいます。
特に、厚手の遮光カーテンを使用している方は、注意しましょう。
また、窓ガラスの近くに家具などの物を置くことも、同様の理由で熱割れの原因になります。
ここまで窓ガラスが熱割れしやすいケースを7パターン解説してきましたが、共通しているのは「温度差」です。
窓ガラスの外側と内側、あるいはガラスの内部と表面に温度差があると熱割れしやすいということを覚えておくと良いでしょう。

窓ガラスの熱割れ対策3選

窓ガラスの熱割れを回避する対策について解説します。
温度差ができにくい環境にする
窓ガラスの熱割れを防ぐには、要因となっている環境を改善することが重要です。
「温度差」が生じないように、具体的な対策を紹介していきます。
温度差を生じさせないためのポイント
・窓ガラスの近くに暖房器具を置かない
・暖房や冷房の風を窓ガラスに当てない
・窓ガラスにフィルムを貼らない
・カーテンやブラインドを閉めきらない
・窓を遮るように家具を設置しない
直射日光が当たる部屋は、すだれやサンシェード、外側から日光を遮るような対策が効果的です。
ガラスのメンテナンスを行う
屋外に面している窓ガラスは日差しや雨風の影響を直接受けるため、長年の外的ストレスの蓄積で耐久性が低くなります。
経年劣化を防ぐには、汚れが目立つ前にこまめな掃除を心がけると効果的です。
窓ガラスを長年放置すると、アルカリ成分が表面を覆うことによりくもってきます。
こまめに掃除をすることで、アルカリ成分の蓄積を防ぎ、ガラスの耐久性が維持されるため、結果として熱割れを予防することができます。
熱割れしにくいガラスに交換する
窓ガラスが熱割れを起こした場合、熱に強く熱割れしにくい耐熱強化ガラスや、弾力性のあるゴムパッキンのガラスに交換するのがおすすめです。
網入りガラスは中のワイヤーの影響で熱割れを起こしやすいため、ガラス自体の耐熱性能を上げることで、熱割れを回避することも一案です。
最近ではパイロクリアという耐熱強化ガラスを組み合わせた、パイロペアという複層ガラスがあり、耐熱/耐火性能と断熱性能を両取りができます。
パイロクリア(耐熱強化ガラス)パイロペア(ワイヤレス防火複層ガラス)
また。弾力性のあるゴムパッキンなら、熱を吸収したガラスが膨張してもサイズの変化に対応できるため、熱割れを防げます。
窓ガラスが熱割れしたら修理・交換しよう
もし、窓ガラスが熱割れしているのを発見したら、早めに修理や交換を依頼しましょう。

「ヒビが入っただけだから」と放置していると、ヒビが拡大し、破損する可能性があるため大変危険です。
なお、窓ガラスの熱割れにより修理や交換をする際は、火災保険が適用されることがあるため、保険契約を確認しましょう。
火災保険の補償のなかに、「破損・汚損」などの特約が付帯されている場合は、「不足かつ突発的な事故による損害を補償する」という内容が含まれています。
熱割れは予測できなかった損害(事故)と認定される場合があり、その際は火災保険を使って修理・交換の費用を支払うことが可能です。
ただし、火災保険の「免責金額」には注意しましょう。
免責金額とは「損害の金額から差し引かれる自己負担金」のことで、保険会社によって異なるものの、1万円から20万円内で設定されています。
窓ガラスの修理・交換にかかった費用が免責金額を下回る場合は保険の対象外となってしまうため、保険申請をする際に注意が必要です。
この機会に火災保険の保証内容や、免責金額について確認しておくことをおすすめします。
まとめ
窓ガラスに突然ヒビが入る「熱割れ」は、表面の温度差によって引き起こされます。
そのため、熱割れを防ぐには耐熱強化ガラスへの交換や、窓ガラスに温度差ができないような環境整備が効果的です。
もし熱割れを起こしたら、すぐに窓ガラスの修理・交換を業者に依頼しましょう。
そのまま放置しているとガラスの割れが広がり、ケガをする危険性があります。
